先日、令和4年度の新潟県公立高校入試試験が行われました。
そちらの問題の解説も追々行っていきますが、今回は令和3年度の国語の入試問題の解説をやっていきます。

下記のリンクで古文の問題解説も行っておりますので、よろしければそちらもご覧ください。
https://niigata-kokugojuku.com/r3-japanese-antient/

論説文を解くポイントは、筆者の主張が書いてある箇所を適切に発見することにあります。それ以外は説明や具体例、事実の確認などが大半です。
要約などをする場合も、読み取った筆者の主張を軸にして、文中のどの箇所を引用するのか、どの言葉をそぎ落とすのかなどを考えながら書くことができれば怖いものなしといえるでしょう。

では早速、問題を見ていきます。
問題に使われた文章は松村圭一郎氏の「うしろめたさの人類学」という本の抜粋です。

問1 文章中のAに最もよく当てはまる言葉を、次のア~エから一つ選び、その符号を書きなさい。

問題自体は適切な接続語を選ぶ問題ですが、その接続語を挟んだ前後の内容を理解していないと正しいものを選ぶことはできません。
Aの直前で「モノ」からくる関係の「かたち」の話をしています。Aの直後にその関係の束が「社会」であり、その中で「人」が作られるとも述べられています。このように関係の在り方と、そこからの関係の作用の仕方をまとめているので、イの「つまり」を選ぶことができます。

問2 傍線部①について、「社会」とはなにか。具体的に説明している部分を、Ⅰの文章から15字以内で抜き出して、書きなさい。

内容理解の問題です。
傍線部①を含む文で、「社会」とは何かという問いかけが行われている。
問いかけがあるということは、答えの部分があるということです。
続く段落の一番最後に「それが『社会』なのだ。」とあります。
「それ」と言っているので、その直前までが「社会」について説明している、問いかけの答えになります。

よって、答えは「人や言葉やモノが行き来する場(14字)」になります。

問3 傍線部②とはどういうことか。その説明として最も適当なものを、次のア~エから一つ選び、その符号を書きなさい。」

「そのやり取りの方法が、社会を心地よい場所にするかどうかを決めている」という部分に線がひかれています。こちらも内容理解の問題です。

4つの選択肢はどれも「心や人との関係」について説明していることがわかります。「心」=「感情」と言い換えることができるので、その部分について書かれている箇所を探すと、5段落目冒頭に「人との言葉やモノのやりとりを変えれば、感情の感じ方も、人との関係も変わる」とあります。
ここからウの「わたしたちの心や人との関係は、他社との言葉やモノ、行為のやりとりの方法によって変わるということ。」を選択できます。

問4 傍線部③とはどういうことか。60字以内で書きなさい。


傍線部③は「僕らが何者であるかは他者との関係の中で決まる」という部分です。記述問題に使われる傍線部にはかなり抽象的なことが書かれていることが多いです。今回もざっくりとした表現しか書いてありません。
こういう時には、傍線部の単語で詳しく説明されている箇所がないか、文章全体を見渡してみる必要があります。
そうすると、この問題は大きい2つのポイントがあることがわかります。

  • その1 「何者か」とはなにか

続く次の段落(10段落目)冒頭で、
「ぼくらは~最初から『何者か』であるわけではない」とあります。
また、似た表現として4段落目には「自分や他人のあり方は、最初から『かたち』や『意味』が決まっているのではない」とも書いてあります。
この二つの表現から、
「何者か」≒「自分のあり方の『かたち』や『意味』」がどういうふうか
であることがわかります。

  • その2 「他者との関係」とはなにか

「他者との関係」について詳しく説明されている箇所は、
・僕らは人にモノを与え、与えられながら、ある関係の「かたち」を作りだす(8段落目)【※人=他者】
・関係の束~人と人との関わり合いの中で構築される(8段落目)
・ぼくらが他の人にいかに与え、受け取るのか。それによって生じる関係~(10段落目)
で見受けられます。したがって、
「他者との関係」=「他者と与え、与えられることによって生じる関係」
ととらえることができます。

正答例
私たちのあり方としての「かたち」や「意味」は、他者とのやりとりの中で生じる関係によって決まるということ。(52文字)

問5 文章中ⓐに最もよく当てはまる言葉を、次のア~エから一つ選び、その符号を書きなさい。

これは正しい語句を当てはめる適語補充の問題です。
空欄ⓐを含む段落の内容から推測します。
段落内では、ぼくらが他者を動かしているし、私たちもその他者によって動かされていることが書かれています。
そして「誰もがこの運動の連鎖のただなかにいる」ことが書かれているので、「『社会』が私たちを動かすように、私たちも『社会』を動かすことができる」と考えられるので、アの【可能性】を選ぶことができます。

問6 次のⅡの文章は、Ⅰの文章と同じ著者の一部である。筆者は私たちが生きている社会をどのようにとらえ、その社会を構築しなおすためにはどのようなことが必要だと述べているか。ⅠとⅡの文章を踏まえ、120字以内で書きなさい。

ボリュームのある記述問題ですね。
これも要所要所のポイントを押さえていきます。

  • その1 「社会」とはなにか

まずは、筆者が「私たちが生きている社会をどう思っているか」に注目します。
おさえるべきは、
〇「人や言葉やモノが行き来する場、それが社会なのだ。」【Ⅰの文章中、問2でも取り上げ済。】
〇「いろんな『思い』が交差する中で、共感/感情を増幅させたり、せっせと抑圧したりして、さまざまな他者と関係の網の目がつくり上げられる。それが、いま僕らの生きている社会の姿だ。」【Ⅱの文章2段落目】
の二点です。

  • その2 「社会」はどうすれば変えていけるか

次に、筆者が考えている「社会を変えるやり方」に注目します。それが書いてあるのは、
〇「いま、『私』と『あなた』をつなぎ、作り出している動きを見定めるもしそれを変えたいのであれば、それまでとは違うやり方で与え、受け取り、その磁場を揺さぶり、ずらし続ければいい」【Ⅰの文章15(最終)段落】
〇「その動きを理解すれば、その社会に複雑に絡み合った糸をほどいて~」【Ⅱの文章ラスト】※「その動き」=共感や感情のスイッチの動き

これらを踏まえて、解答を作成します。

正答例
私たちの社会は、モノや言葉、行為が行き来する、共感や感情を増幅させたり、抑圧したりすることで生じる人同士の関係の連鎖によって作られていることを理解し、現状の他者との関係を見定め、状況に応じて他者とのやりとりの方法を変えていくこと。(115字)

最後に

記述試験は、書くべき場所がわかっても字数に合わせて語句の取捨選択を行ったり、言葉を言い換えたりしなければならないケースがあります。
回数をこなすことも大事ですが、語彙を増やすことも少しずつ行っていければいいでしょう。