去る令和5年3月7日、令和5年(2023)年度の新潟県公立高校入試がありました。今回はその解説を行っていきます。
試験問題と解答のみ新潟日報などの地方、読売新聞などの全国紙に掲載されています。
大問【1】は漢字の読み書きの問題でした。出題数や読み書きの問題数の配分など変更点はありません。書き問題では、特に「とめ・はね・はらい」に気を付ける漢字が多かった印象です。
大問【2】の文法問題では、前年度から出題形式が変わっています。変更後の一問一答形式はそのまま継続されいていました。来年度以降も出題形式はこの方針で行くことでしょう。
今年は多義語に関する出題がありました。二人の会話文中に出てくる共通の「A」という言葉について、
・「最も興味深いこと」という意味がある
・「物事の終わりの段階」という意味はない
ということがわかります。以上の二点から「ウ)佳境」を選ぶことができます。
当たり前のことですが、言葉は読んだり書いたりするだけでなく意味を正確に覚えなければなりません。日頃の漢字テストや、テキストの文中に出てくる言葉の学習などを疎かにしないようにしましょう。
大問【3】の古文の問題。出題の仕方が前年度から変更されました。古文の原文があり、それを踏まえての先生と生徒の対話文が並んでいる形式は、今年も採用されていました。
高校入試問題の古文の問題を解くうえで大切なのは、
1⃣省略されている主語を自分で補いながら読み進める
2⃣助動詞の用法を間違えない
3⃣敬語が誰にどう使われているのかを確認する
まずはこの3つに気を付けることです。
今回の令和5年度の古文では特に、1⃣に重きが置かれた問題が多くありました。
問2
傍線部は(1)の「隆円に給へ」の意味として最も適切なものを、次のア~エから一つ選び、その符号を答えなさい。ア)隆円にお申しつけください。
正答 イ
イ)隆円にお与えください。
ウ)隆円にお聞かせください。
エ)隆円にお返しください。
淑景舎の女御と僧都の君が会話している場面です。
文末の注釈で隆円=僧都の君ということはわかっています。傍線部を含む発言の「それは隆円に給へ
。おのが~」は直前に書かれているように僧都の君の発言です。「給へ」は命令形、つまり自分に何かしろという場面になります。「給へ」以外に動詞は見受けられないので、今回の「給へ」は補助動詞(お~する、~させていただく)の意味ではないことになります。
補助動詞ではない「給ふ」の意味にはイ)以外の意味はないので、正解はイ)になります。
続いて問3の問題です。
問3
傍線部(2)の「ことごとをのたまふ」は誰の動作か。最も適切なものを、次のア~エから一つ選び、その符号を答えなさい。ア)淑景舎の女御
正答 ア
イ)僧都の君
ウ)宮の御前
エ)作者
文中に「を」「に」「ば」「が」「ども」これらの助詞が出てきたら、主語が変わる目印になります。「鬼婆(おにばば)どもが主語を変える」と私は覚えています。
傍線部(2)の少し前まで問1の隆円(僧都の君)の発言が続いています。「それは隆円に~かへさせたまへ」までが隆円(僧都の君)の発言で、「と申しけるを」の部分以降は別の主語に代わっていることがわかります。
そこで先ほどの続きで、「と申しけるを、聞き入れたまはで、ことごとのたまふに、~」とあります。この部分の訳は「~申しあげたのに、(○○は)聞き入れて承諾なさらないで、ほかのことをおっしゃるので、~」という風になります。
場面から考えて直前まで会話していたア)淑景舎の女御が答えになります。
続きまして問4です。
問4
傍線部(3)「あまたたび聞こえたまふ」には、誰の、どのような気持ちが表れているか。最も適切なものを、次のア~エから一つ選び、その符号を答えなさい。ア)宮の御前の、淑景舎の女御からの返事を待ちわびる気持ち。
正答 エ
イ)僧都の君の、宮の御前からの返事をありがたく思う気持ち。
ウ)宮の御前の、僧都の君からの返事を潔くあきらめる気持ち。
エ)僧都の君の、淑景舎の女御からの返事を強く求める気持ち。
先ほどの問3同様、直前まで会話していたのは淑景舎の女御と僧都の君であることはわかっています。
先ほども引用した「~と申しけるを、聞き入れたまはで、ことごとのたまふに、~」という部分で、またも主語が変わる助詞が使われていることがわかります。
その直後の「いらえさせたてまつらむとあまたたび聞こえたまふに、~」という部分で、文中の注釈によると「お返事をいただこうと何度も申し上げなさるが」という意味になります。
お返事をいただきたいのは僧都の君であり、その相手は淑景舎の女御なので答えは(エ)になります。
続いて問5です。
問5
傍線部(4)の「いみじうをかしきことぞ限りなき」について、作者はどのようなことに対して素晴らしいと感じているのか。60字以内で書きなさい
「いみじうをかしき」は「とても才気に溢れていてこの上なく素晴らしい」という意味です。
直前にある「『いなかへじとおぼしたるものを』とのたまはせたまはせる御けしき」が素晴らしいという内容です。「いなかへじ」という聞き慣れない言葉は、古文の最後の部分とBの会話文から二つの意味を持っていることがわかります。一つ目は、一条天皇が所持していた「いなかへじ」という笛の名前です。このことは作者も宮の御前も知っていたとの記述もあります。二つ目は、「否(いな)、替えじ」と書くことで「いや、返さないつもりだ」という意味を持ちます。「否(いな)」は「いいえ」を示す言葉です。また、「替えじ」の「じ」は打消意志という意味を持つ助動詞で、「(笛を)交換しないようにしよう」と現代語訳することができます。
Bの文章の一番最後で、この二つの意味が「いなかへじ」に掛けられていることを作者は知っていたと書いてあるので、「宮の御前が掛けことばを用いて、『淑景舎の女御は笛を交換する気がない』ということを解答できればよいということになります。
最後に問5を見ていきましょう。
問5
傍線部(5)の「この御笛の名、僧都の君もえ知りたまはざりければ」とはどういうことか。最も適切なものを、次のア~エから一つ選び、その符号を答えなさい。ア)故殿がくださった笛の名前を、僧都の君だけが知っていたということ。
正答 ウ
イ)故殿がくださった笛の名前を、僧都の君は知らされていなかったという
こと。
ウ)上が所有している笛の名前を、僧都の君は知らなかったということ。
エ)上が所有している笛の名前を、僧都の君が誰にも知らせなかったという
こと。
傍線部中の「~僧都の君もえ知りたまはざりければ」の「え~ざり(ず)」が決まった表現で「~することができない」という訳になります。よって、傍線部全体を訳すと「この笛の名前を、僧都の君も知ることができていなかった」となります。正解はウ)になります。
以上が大問(3)までの解説になります。
長くなりましたので、大問(4)の解説は別の記事にまとめたいと思います。