高校入試に出題される古文では、
・歴史的仮名遣いを現代仮名遣いに直す
・古典文法・単語の知識を問う問題
・代名詞や省略されている主語を問う問題
・文の内容を問う問題
・筆者の主張や内容の要約問題(記述)
などが主に出題されます。
文中にカタカナと感じで本文の解説のルビがふってあるので、読解自体はさほど難しくはありません。
問1 波線部分の「いへども」を現代仮かなづかいに直し、すべてひらがなで書きなさい。
歴史的仮名遣いから現代仮名遣いへの変換については、ルールが決まっているので、それに従って書き換えればよいです。
この場合、「いへども」の「へ」が歴史的仮名遣いになっています。
古文では文頭以外のハ行はすべてア行に変換するルールになっています。
だから「へ」→「え」に書き直して、「いえども」とすべてひらがなで書くのが正解になります。
問2 傍線部①の「心にくからめ」の意味として最も適当なものを、次のア~エから一つ選び、その符号を書きなさい。
次は単語の知識を問う問題です。古文単語には、
①現代では使われていない言葉
(例)いと、げに、さらなりetc.
②現代でも使われているが意味の異なる言葉
(例)おこたる →〈古文〉病気がよくなる 〈現代語〉おろそかにする
③現代でも同じ意味で使い続けられている言葉
(例)ほど、汝etc.
があります。
今回問題になっている「心にくし」という形容詞(名詞を修飾する言葉)は③に当たる言葉です。
「(自分の心が憎くなってしまうほどに)奥ゆかしい、心がひかれる」という意味になります。よって、正解は「ア)奥ゆかしい」になります。
「心にくからめ」は「心にくしの未然形」+「推量(~だろう)の助動詞『む』」から構成されています。本来文末は終止形で終わるため「心にくからむ」になりますが、前の行に「こそ」という係助詞があります。これにより係り結びが発生し、文末が終止形「心にくからむ」→已然形「心にくからめ」に変化しています。
問3 傍線部②の「一芸も習ひ得ることなし」の意味として最も適当なものを、次のア~エから一つ選び、その符号を書きなさい。
「~も…なし」という表現は、現代語でいうところの「~も…ない」という意味になります。これは今も使う言い方ほぼそのままですね。今回の文に当てはめると、「習ったことを得る(身につける・覚える)ことはない」という訳になります。
よって「ウ)一つの芸能さえ習い覚えるとこともない。」が正答となります。
問4 傍線部③の「その人」が指す部分を、文章中から10字以内で抜き出して、書きなさい。
これは前述した、文中の代名詞を問う問題です。「その人」なのですから、直前に話題に出てきた人を探せばいいことになります。
すぐ前の文で、「天下のものの上手といへども、始めは不堪の聞こえもあり、無下の瑕瑾もありき。」とあります。
「天下のものの上手といへども」の「と」の直前までが主語になります。つまり、この文の主語は「天下のものの上手」になります。
「天下の」は「一番」の意味になります。「もの」は、今回は話題になっている芸能のことを指します。「上手(じょうず)」は名人という意味。そのあとの文で「その人」と言っているのですから、「天下のものの上手」は同一人物ということになります。
問5 傍線部4の「諸道かはるべからず」とはどういうことか。最も適当なものを、次のア~エから一つ選び、その符号を書きなさい。
こちらは内容の理解の問題になります。
「諸道」とは「もろもろ(いろんなこと)の道」と訳せます。今回は芸能の道のことでしょう。「~べからず」とは「~してはいけない」と「~するはずがない」の2通りの訳し方があります。
前者だと意味が通らなくなってしまうので後者の訳を使います。このようにして「いろんな芸能の道でも変わるはずがない」という訳になり、イを選ぶことができます。
問6 作者は芸を身につける上で、どのようなことが大切だと述べているか。文章全体を踏まえ、50字以内で書きなさい。
指示された内容を記述する問題です。
筆者が「~のようにするべきだ」と述べている部分を文章全体から探していきます。そうすると文章中の、
・「いまだ堅固かたほなるより、上手の中にまじりて~つれなく過ぎて嗜む」
・「道になづまず、みだりにせずして年を送れば」
・「道の掟正しく、これを重くして放埓せざれば」
という箇所に注目できます。
内容まとめの記述問題のポイントは、
・重複している表現はまとめる
・文字数の多い表現は、端的な短い言い方に改める
これを念頭に置いて、指定文字数にまとめることを心がけてください。今回の場合、
「みだりにせずして」=「放埓せられば」=勝手気ままに
「平然と押し通して稽古に励む」「稽古の道に停滞せず」→稽古を継続する
とするといいでしょう。
(正答例)未熟なうちに名人の中にまじり、芸道の規律を守り、勝手気ままにせず、稽古を継続すること。
古文は、現代語よりも馴染みがないという人が多いので、
・たくさん古文を読む(特に声に出して読むと〇)
・問題を解いて傾向やを解き方のコツをつかむ
ということから初めて、古文に触れる機会を増やしてください。